本校は古代山陽道の沿道に位置しており,校区には古代から近現代に至るまでの様々な史跡,名所,先人たちが存在している。豊かな学習材に恵まれていながら,そのことを知らないままに卒業していく児童がほとんどである。そこで昨年度より6年生の社会科・総合的な学習の時間でそれらについて学習し,その内のひとつである「八瀬家住宅」について,子どもガイドをすることにした。そして,児童がガイドできないその他のスポットについてマチアルキを用いて揖西町への来訪者に伝えようと考えた。
児童が地域の歴史について学び,その発信者となることで,積極的な情報収集,調査及び情報を精査する力を身につける。歴史に関心の高い来訪者に向けて学習成果を発表することは,ただ教えられたことを伝達するだけでなく,主体的に課題を発見し,検証するという良い学びの機会となる。
これまで,地域学習の成果についての発表は,校内で下級生に紹介したり,参観日に保護者に発表したりするものがほとんどであった。
アプリを活用することで,時間的,空間的制約が取り払われるため,校内での発表と比較にならないほど多くの方に地域の歴史を紹介することができる。それにともなって,責任ある情報発信をするために各種資料を精査する必然性が生まれる。
地域で観光ガイドをされている方から,校区の歴史や先人についてのお話を聞き,来訪者に伝えたいスポットを検討する。学年で協議し,15カ所を候補に挙げたが,11カ所に絞った。
市の文化財課,インターネット,地域の方への聞き取り,各種文献資料からスポットについて調べる。
膨大な情報を集めたが,来訪者が屋外でも読みやすいように100 字から150字程度にまとめる必要があった。また,自分たちが伝えたいこと,スポットの文化財的な価値,先人の関係者が伝えてほしいことには共通点と相違点があったため,グループで検討し編集作業を行った。
児童らは自由に使えるスマートフォンを所有していないので教員らで協力し,実際にスポットへ出向いてテストを行った。
11月中旬の「八瀬家住宅子どもガイド」に合わせてマチアルキを公開した。受付で来訪者にアプリのチラシを配布した。延べ500人が来訪され多くの方が興味をもってくださり,インストールされた。
児童らは,タブレット端末やスマートフォンの操作には慣れているが,情報の発信者になることの経験はほとんどなかった。今回の実践で,自分たちの学習したことがARで表示されることの驚きや喜びと,それに伴う発信者としての責任を感じていた。また,地域の史跡,名所,先人たちについて協働的に調べ,情報を精査して発信する機会を得たことで,地域への愛着も深まった。そして何より,アプリを体験してくださった来訪者から褒めてもらうことは,児童にとってこの上ない喜びであった。
今回は6年生が地域の歴史として学習し公開したが,4年生社会科の地域の先人についての学習など,他の学年でも活用の機会があると考えられる。