本校がある山城地域には,昔からの妖怪伝説がたくさん残っており,「妖怪街道」という観光客向けの道沿いには妖怪のモニュメントがたくさん設置されている。児童らは,以前から妖怪伝説について総合的な学習の時間に調べ学習をしており,これらの学習の成果をマチアルキのコンテンツとして利用し,山城地域を訪れた観光客に楽しんでもらおうと計画した。
コンテンツは,妖怪になりきった児童らが自分の声で話す内容とし,単なる紹介にならないように工夫した。また,地元の施設と連携し,すべてのコンテンツを閲覧した人には,プレゼントがもらえるようにした。
妖怪には,その一つ一つに伝説があり,児童らの思い込みだけで内容を決めることはできない。幸いにも学校付近にある道の駅に,それらの詳しい情報が集まっており,授業中だけでなく,休日にも何度か訪れ,内容を詳しく調べた児童もいた。
これまでも,妖怪に関する調べ学習を実施していたが,観光客向けのコンテンツをつくり,学習成果を校外に発信することを学習の目的に加えることで,児童ら自身の意欲を高め,情報に対する責任を養うことにもつながると考えた。
画像や位置情報からコンテンツにアクセスできるAR 技術は,学校の様々な場面での活用が考えられるが,その利用には技術的なハードルが高い。
マチアルキは,コンテンツとその表示方法さえ決めれば,すぐにAR が制作できる。運用も安定しているので,学校でも簡単に利用でき,活用方法に集中できるのが良い。
また,コンテンツは,スマートフォンを通して校外にも発信できる。保護者のスマートフォンを使って,児童らが自慢しながら,親子でコンテンツを楽しんでいる姿を見かけるのはうれしい。
どの妖怪を取り上げ,どんな内容にするかについて,グループで相談した。また,誰がどの妖怪を担当するか,どんな順番で取材するかの役割を決めた。
妖怪モニュメントを,タブレット端末で撮影した。撮影した写真ファイルに含まれる位置情報をマチアルキに登録した。
撮影した妖怪モニュメントを元に,自分がイメージする妖怪のイラストをタブレットで描いた。さらに,その妖怪になりきって声を録音して動画を制作した。
位置情報を登録した場所に行き,アプリでコンテンツが再生されるのか,動作確認を行った。
コンテンツの完成イベントを開催し,来場者にマチアルキの利用方法について説明した。また,撮影時の写真を集めて,写真展も併設した。
コンテンツの制作にあたっては,これまで地域で大切にしてきた妖怪伝説を,児童らが身近に感じることができるように,児童ら自身の言葉で現代風にアレンジするようにした。
その制作では,市の観光課をはじめ,道の駅や地元の施設など数多くの方の協力を得ることができた。
児童らは様々な方から話を聞いたり,交流を深めたりすることで,地元に貢献していることを自覚し,ふるさとを大切にする気持ちを高めることができた。
また,つくったコンテンツがメディアに取り上げられたことで,児童らに大きな自信ができ,日々の活動がさらに積極的になった。