北海道標津町にある「ポー川史跡自然公園」は,国指定天然記念物標津湿原と国指定史跡伊茶仁カリカリウス遺跡から成り,歴史,文化,自然が融合した野外博物館としての機能を持つ公園である。
公園を訪問する見学者に向けて,公園に関する正確な情報を伝えるとともに,楽しみながら園内を見学してもらえるよう,マチアルキを活用したARスタンプラリーを制作した。すべてのコンテンツを見た人には,オリジナルのポストカードを配布した。
地域の歴史や自然を学ぶため,町内や根室管内の小学生が,ポー川史跡自然公園の見学に訪れているが,見学時に十分な情報を提供するための解説員が不足していた。そこで,AR技術を活用して,公園や地域に関する正しい情報を提供し,興味・関心の向上につなげたいと考えた。
地域学習の中心となっている公園に,ICTコンテンツを整備することで,学びのフィールドとしてこれまで以上に活用してもらいたいと考えた。
同時に,この取り組みが,修学旅行や観光など,道外からの見学者の満足度向上にもつながると考えた。
国指定の文化財である公園内に,説明のための看板や施設を設置することは,文化財の景観保護の観点から望ましくない。また,看板や施設は一度設置してしまうと,内容の変更や修正が容易には行えない。マチアルキは文化財の景観を損ねることなく,伝えたい情報を見学者に伝えることができる点がメリットであると感じた。
場所や施設などの現実世界に情報を付加できるARは,公園や博物館など,見学や実体験を伴う施設での活用に,とても相性が良いと感じた。
「地域の歴史」をテーマに,園内8箇所をARポイントとするコースを,小学校の学習内容とも関連づけて制作した。各ポイントでの表示内容は学芸員が制作した。
ARポイントの表示内容は,町内の小学校に配布している副読本と関連する内容にし,校内学習と連携した活動ができるようにした。
ARコンテンツは「画像認識方式」で登録し,園内にマーカー画像を設置した。
園内のARポイントがわかる地図を制作し,スタンプラリーの参加者に配布した。
園内のARポイント8箇所をすべてを回った人には,オリジナルのポストカードを配布した。
マチアルキの公開が小学生の見学時期とずれたため,まずは一般の見学者を対象に公開を行った。「歩くだけでは気付けなかった情報を知ることができた」との感想をもらい,一定の成果を得ることができたと考えている。
今回は「歴史」をテーマにコースを企画し,コンテンツを制作したが,マチアルキは,自分でARをつくれるので,「植物」や「動物」など,他のテーマでのスタンプラリー制作も検討したい。
町内には,ポー川史跡自然公園以外にも史跡等の文化財が数多くある。こうした文化財とも連携し,町内にマチアルキのコンテンツを増やしていくことも検討していきたい。